ショートショート Bartender
- 2007/06/29(金) 22:15
Bartender/バーテンダー
「マティーニです」
オリーブの乗ったグラスがバーカウンターの上に差し出される。それを見た女性が顔を上げた。ミキシンググラスをステアしていたバーテンダーがカウンターおくの男性のほうにちらりと目をむけ、「あちらからです。」と付け足した。マティーニを受け取った女性は軽くコンタクトを送ったらしかった。カウンター奥の男がグラスを一気に傾けると、その女性の下へと足を運んできたからである。
その様子を、妙齢の女性が見ていた。入り口横のピンク電話の陰になるような形で彼女は佇んでいた。
そしてベルベット・キスを口へ運んだ…がもう中身はなかった。彼女はつまらなさそうな顔をしてから、ピーナッツを齧った。バターの香ばしい香りが口の中に広がったが、それは彼女を元気付けたりは出来なかった。
カウンターでは先ほどの男女が楽しそうに笑いあっている。
ピーナッツしか口元を動かす動力源になりえない彼女―――石井 サナエ、それが彼女の名前だ―――はそれを横目で見ていた。別に羨ましいというわけではない。彼女の目には羨望もなければ嫉妬もない。
ただ、仕事での失敗に堪えていた。それを忘れようとバーに来たものの、何のことはない。彼女は酔っても酔っても忘れられなかった。もともと酒に強いのだ。
バーテンダーはグラスを丹念に磨いていた。口元にはそれらしく見えるようにか、髭を蓄えている。なんとなくサナエはそれに対して不快感を抱いた。一瞬、何故か分からなかったが、それはすぐに氷解した。上司のちょび髭と一瞬重なったからだ。
一度そう思うと、目を離せなくなる。でも、よく見れバーテンダーはスラリとした立ち姿のほうが髭よりもよっぽど印象的にサナエには思えた。この仕事は長いのだろうか?
からんからん
と音がして後ろを男女が通り過ぎる。ふと確かめればあの男女だった。いつの間にか女の手は男の手に巻きついている。
あれは男のほうが上手だったのか?それとも女のほうがうまいことやったのか?
店の中にはもう自分とバーテンダーしかいない。彼の相貌はわからなかった。自分の位置からではライトとライトの間に挟まれて、顔が確認できないのだ。じっと見ていると、彼はグラスを拭く手を止めてグラスと布巾を置くとカウンターを出た。
彼女は其の間も彼から目を離さなかった。店内には低くジャズの調べが流れていた。勿論、ジャズバンドはいない。でもちゃんとしたレコードの音だった。トロンボーンやトランペット、ホルンの音ではなく、力強くもあり壊れてしまいそうな歌声と、ピアノの叩くような鍵盤の音が薄暗い店内に溶けている。
バーテンダーはドアの札を「OPEN」から「CLOSE」に返るとまたカウンターに戻った。そして幾種かの酒をミキサーにかけると慣れた手つきでグラスに注ぎ、チェリーを飾った。
それを丁重な動きでサナエの目の前に置いた。
「サーヴィスです。」
彼はそういうとまたグラスを拭く仕事に戻った。その声は低く、どこか異国を思わせる叙情的な響きがあった。
「ねえ。」
サナエが声をかけるとバーテンダーは振り向いて、何か?と聞いた。そうだ、間違いない。彼の声の響きには異国のものがある。
「どこの国の人なの?」
あまりに率直だったか、とサナエは口に出してしまってから考えたが、バーテンダーは気にした様子もなく「アイスランドです。」と答えた。アイスランド?場所や地名を知っていても、人生にはかかわりのない場所だ。
「何でサービスしてくれるの?」
サナエの問いに彼はよどみなく答えた。「私の仕事は…」
「私の仕事は私が出来ることで誰かに安らぎを感じてもらうことなのです。分かりますか?私はこれを商売にしていますが、ここはただの金儲けのためにあるわけではありません。
私にとってこの店はオアシスなのです。日々の喧騒から離れて、嫌なことや辛いこと、思い出や悲しみを少しでも薄める場所なのです。そのために私はこうしているのです。サーヴィスは、その一部分に過ぎないんですよ。」
美しいピンク色に輝く泡状の氷が夕焼けを思わせるグラスが、仄かに揺れる光を受けていた。まるで夕焼けのようだ。サナエは思った。
「テキーラ・サンセットです。太陽は昇るばかりではありません。どんな日にも、沈むものです。しかし、だからといって悲しんでばかりではいけません。太陽は人の人生を照らすからこそ、太陽なのです。
サンセット、いいじゃないですか。それは次に太陽が昇る証なのですから。」
バーテンダーはそういうと、にっこりとサナエに微笑みかけた。いつの間にサナエの視線は彼に釘付けになっていた。テキーラ・サンセットに目を落とすと、氷の泡が音もなく崩れて、キラキラと光を反射していた。
サナエはそれにそっと口付け多。サンセット。いいじゃないか。私は終わってしまったわけじゃない。バーテンダーが教えてくれたものはこの地球上でもっとも大きなものの一つだろう。後は、私が決めることだ。
少なくとも、落ち込み続けるなんていう選択肢はもうサナエの中にはなかった。
ただ、もう少しこうして音楽とおいしいお酒を楽しんでもいいんじゃあないだろうか?勿論、まだ夜中なのだ。
日が昇るまで、ゆっくりしてもいいじゃないか。サンライズはまだ遠い。サナエは口の中に解けるテキーラ・サンセットを楽しんだ。
Fin.
鹿
- 2007/06/28(木) 00:24
鹿を見た。
それは27日の夕方のことであった。小生は三重県のS市に住んでいて、I市にある大学へ通っている。
帰り道でのことであった。S市とI市を繋ぐ唯一の道路をバイクで走っているときのことであった。その道は山を無理矢理に切り開いた道であり、曲がりくねり、道は細く、カーブはきつく、しかし山間の景色や木々の間から見える小川のせせらぎは活力を与えてくれる、そのような道でのことであった。
昔からよく聞かされたものである。父はこういった。
「あの道にはよく鹿がいるんだ。道を渡ろうとして轢かれる奴もいる。」
そのようなことを言われていた小生は勿論その山に鹿がいることは知っていた。しかし見たことはなかった。本当にいるのであろうか?
其の疑問はついてまわった。いや、もう本当はそんなものいないのだとも思ってすらいた。鹿なら奈良公園だけで十分である。そうも考えた。
しかし、小生は見た。アレは確かに鹿だった。カーブを抜けると、人工的に切り開かれた斜面が緩やかになり、草が繁る場所があった。
その鹿は、そこにいた。そして草を食んでいた。
小生は思わずアクセルを緩めた。鹿も頭を上げてこちらを見ていた。彼からは(雄かどうか知らないが)アカラないだろうが、視線は交差した。まだ小さい鹿であった。
そう、小生は知ったのだ。まだ死んでいない自然があることに。いき続け、其の枝葉を増やしている野生があることに。
短い邂逅だったが、それは山の恵と、自然の大切さを小生に教えてくれるものであった。この自然を失ってはいけない。
「明日は電車に乗ろう」
と考えた。ゆっくりとした時間を小生もしかも送れればよい。そう思える出来事だった。
パクリ
- 2007/06/21(木) 23:07
友人のEGG氏がちょっと変わったブログの更新をやっていた。呼んでいて面白かったのでまねしてみる。
パクリってヤツである。ジャスラックに訴えること、またはジャスラックさん、著作権侵害って騒ぐには止めていただきたい。消えろ!カスラック!!!
前日夕方5:30 バイクのオイルランプ点灯。無性に腹がたつ。
前日夜7:00 ご飯を食べながらニュースをチェック、本日が梅雨の中休み最終日であると知る。バイクを整備してもらいに行く計画を立て始める。
前日夜11:00 ウイスキーをロックで飲む。「ボブの絵画教室」を見ておおハシャギ。もうすぐ二十歳なのに…
本日1:00 凄いスピードで消えるウイスキー、三杯目に突入。
1:30 就寝
2:30 戦争に行って何故かゾンビと戦う夢を見て起きる。怖かった。
6:30 妹に起してもら、う、 が起きられずに二度寝
7:00 起きる。妹に礼を言う。頭がぼんやりとしている。
7:05 洗顔を兼ねて痩顔マッサージをする。お酒のせいか顔がむくむ。
7:10 ご飯を食べながら天気を確認。晴天なり。
7:30 バイクに飛び乗ろうとするが、よく考えたらフランス語のテストがある。
7:31 「天気がいいからな」と一言残して走り出す。フランスなんて知るか!
7:35 帰ってくる。財布を忘れた。
7:36 ポケットに入ってた。
7:50 家から出たくなくなる。
7:55 諦めて出る。
9:00 一講義目開始
9:02 落書き開始
10:20 いつの間にか授業が終わる。
10:40 二講義目開始
10:42 頑張って勉強する。
11:00 全てのタスクが完了。
11:25 携帯確認。友人からマックへのお誘いが。
11:27 返信を打っていると先生に見つかった。
11:30 返信を打っているとまたもや見つかる。
11:40 携帯に飽きる。
12:00 授業終了。知り合いを起す。めがねを隠した。
12:10 食堂でお弁当を広げる。友達の席を奪うことに成功。
12:20 ご飯を食べ終わる。
12:25 友人に「お前は空気か財布にしかなれない」と断言。
12:35 小生の周りに賭博集団(友人)が集まる。ゲーム開始。
12:40 うるさい。
12:42 小生キレる。
12:45 隣にいた太った女子もキレる。騒いでないのに一応謝る小生。
12:47 やはりうるさい。
12:50 デブ女が小生の鞄を踏みながらキレる。
12:51 小生の名言発動「確かに俺らはうるさい。でもな、デブは遠慮して生きろ」
12:52 デブの友人がしょんぼり。
1:00 三講義目開始
1:15 簡単すぎて寝る。
1:30 クーラーがつけられる
1:35 寒い。
1:37 いきなり鼻血が。
1:42 きわめて冷静に対処。
1:43 第二波。
1:50 諦めて保健室へ。
2:10 帰還
2:40 四講義目、最終講義開始
2:41 フランス語はテストだった、ということを思い出す。
2:45 不貞寝
2:46 テスト開始
2:47 答えのないリスニング問題、発動。
2:48 焦る小生。
2:50 先生「プリント間違えちゃった」
2:51 テスト延期かと思いきや今からプリントをとってくることに。
2:52 友人とだべる
2:53 フランス語の問題について。
3:00 先生帰還 そしてテストへ…
3:20 燃え尽きたよ。真っ白にな
3:45 友達の生まれた日がフランス語で ディ ヌフ メ だった。
3:46 メ は五月だった。
3:37 メ はフランス語で一番音の短い月
4:00 授業終わり。
4:10 バイクで整備工場へ。
4:25 整備工場でプラグ交換、オイル充填してもらう。
5:00 調子の戻ったバイクで走り回る。
5:20 ジャスコで買い物。ある店で流れる音楽に心奪われる。
5:40 聞き知れていたらいつの間にか時間が…
5:41 安物の指輪購入
5:50 別の輸入物のお店で店員のお姉さんに促されて指輪購入。気に入った。
5:51 友達のために銀磨きの布購入。
6:00 バイクでどれだけスピードが出せるか試す。
6:40 110キロをマーク。家に帰りつく。
7:30 ご飯を食べながら後ろに人を乗せるためのヘルメットを買おうと考える。
7:35 カブに跨りヘルメットを見に行く。安い。
8:00 お風呂大好きお風呂タイム。
8:02 入浴剤がなかった。…ショック
9:02 …?何をしてたのだろうか?
10:00 音楽を聴き始める。安物の指輪じゃなくてCDを買えばよかった。
11:00 現在。
因みにテストは分かってるだけで二問間違えました。今までテストが全て100点だっただけにむかつきます。(自分に)
バイクは楽しいですね。ツーリングに行きたいです。
父の日
- 2007/06/17(日) 22:54
今日は父の日だった。小生は実家暮らしなので、両親と共に住んでいる。
小生の父は気難しい人間であった。その昔などは厳しく、暴力的でえあり、家庭の全権を握っていた。幼い頃、小生は父が怖かったものである。
そんな父ももう四十を超えた。立派なオッさんである。それでもなんとなしにやはり子や妻から認めてもらいたいらしい(当たり前か)
そういったものが父の日などに出るらしかった。
母から聞いた話によれば、父はあまり小生や妹にプレゼントなどを貰っても嬉しがった素振りを見せたりはしないものの、内心は喜んでいるらしかった。
そんなわけで、今回は日本酒詰め合わせをあげてみた。三本の日本酒が詰めあわされているものであった。
大して酒が飲めない父でも三種の味が楽しめ、また値段も手ごろであった。1000円である。
「やれやれ」
と小生は口に出しながら其の酒を買った。本来なら日本酒好きの小生自分ひとりでのみたいくらいのものであるが、そういうわけにも行かない。
なぜなら自分用には1350円のウイスキーを買ってしまったから。
ウイスキーはおいしい。日本酒よりも飲みやすく、劣化しにくい。ほろ酔いを楽しむタイプの小生にはうってつけである。うまうま。
そんなわけで、今月はお酒代がかさんで大変です。
あーおいし(注、この文章はお酒を飲みながら書きました)
もうやめだ。
- 2007/06/13(水) 22:33
先ほどいい気分で音楽を聴いていると突如自動更新が始まり、そしてコンピューターを自動的に五分後に再起動すると言い出した。
いい気分で鼻歌まで歌って音楽を聴いていたのに、だ。
許せない気分になった。其のノリで小説を書いてみようかとまで思っていたのに、全然駄目だ。
許せない。
そう思ったので全てのことを破棄してゲームをすることに決めました。
今日小説を書いていないのは、自動更新のせいです(いいわけ)
死を予感する小生とぴえーる。
- 2007/06/11(月) 00:55
死を予感するというのは、いわゆる「寝たら駄目だ、寝たら死ぬぞ!!」ということである。すなわち、寝たら死ぬという状況にあったということだった。
というのも、今日は朝の六時におきて仕事に向かい、四時半にバイクで帰社、しかし昨日の夜も12時まで仕事だった小生。
ブッちゃけてしまおう。実は小生社会人などではなかった。勿論「帰社」という言葉も比喩であり、今まで仕事、と証していたものの殆どは学校のことである。
ていうか大学のことである。あまりに時間が取れないのはバイトと大学生活とクラブの板ばさみ(三枚のイタはとても綺麗に連携攻撃をしてくる)であった。
つまり昨日の夜は12時までバイト、今日の朝は6時に起きて短期のバイト、そして夕方の7時からまた先ほど12時までバイトだった。
勿論睡眠時間は其の狭間の限られた時間のみとなる。死にそうになりながらバイトをする小生。
今日は軽く13時間ほど働いた。そして夕方帰りにバイクに乗っていたときのことだった。
目の前がゆらゆらとゆがみ、ぼやけるのだった。ぱちぱちと瞬きをすると、それは一瞬だけ元に戻り、そしてまたぼやけた。
「眠い……」
しかし、ここはバイクの上だ。寝たら死ねることは物が地面に向かって落下するより明らかだった。
「寝たら駄目だ、寝たら死ぬぞ」と思いながら運転を続けた。
意識が半分飛んだまま、アクセルを開けるとウオンとバイクが唸った。体を引き剥がされるような強風に耐えながら小生は眠気と戦ったのだった。
気がつくと小生は家でご飯を食べていた。目の前で母が小生の持っている皿に次々に死者もをホ織り込んでいて、それを小生はうまいうまいと阿呆の子のようにいいながら食べていた。
バイト先ではそれに乗じて意識のないまま(新人にも関わらず)レジを打った。
一体どのようにしてバイト先に向かったのか、やはりそこも抜けていた。五時間、夕方からはたらいたはずだが、それすらも半分ほどしか記憶がない。
明日もあさっても場8位とで12時まで働く小生。死なないようにしたいと思う。
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